一日ひと組限定、茅葺き古民家の料理宿「里山の宿『梅庵』」(栃木県佐野市)の宿泊レポです。
東北自動車道・佐野藤岡IC、または北関東自動車道・佐野田沼ICから約30分の佐野市郊外に位置する「梅園町」という風雅な町名がついた山里の、車一台がやっと通れるダートのどん詰まりが目指す宿です。
以前東京・虎ノ門で料理店を経営されていたご夫婦が築250年の民家を2002年に近隣の畑と共に購入、改装して「一日一組、しかも四十代以上限定」の料理宿として開業したという自然派志向の宿です。
実際、宿の宿の周りには様々な種類の草花が咲き乱れ、鶯と蛙の声がひっきりなしに聞こえてきます。
猪・鹿・熊までもが出没するという環境です。
チェックインの二時ちょうどに到着すると、ご主人がお出迎えに。荘厳な玄関をくぐると囲炉裏の炎が迎えてくれます。
土間から上がると、最初の囲炉裏を切った部屋から奥に続く三部屋が客室になっていて、それぞれの部屋が長い広縁で繋がり、窓からは花々をつけた木々と鳥の姿が望まれます。
庭木はほとんどが購入時のままということです。
風呂は別棟にしつらえられています。
残念なことに天然温泉ではありませんが、機械制御による人工温泉「不老の泉」の湯は柔らかで入り心地の良い湯です。
休み処には池波正太郎の文庫本がぎっしり並んでおり、宿名の由来(「仕掛人・藤枝梅安」から)も納得。
里山に夜のとばりが訪れると、囲炉裏を囲んで夕食の時間です。
本日の料理は旬の筍と山菜、敷地内で獲れたという猪鍋を中心としたコース。
料理店を営んでおられたというご主人の腕は一流で、春の山の恵みは自在に調理されてどれも逸品に仕立てられています。
前菜から〆のうどんまで充分満足させていただきました。
左:前菜(金柑甘露煮・ツブ貝・玉子焼き・のびる・蕪甘酢)
右:小鉢(田ぜり・早蕨・山うど)
左:焼き筍
右:筍と野蕗の土佐煮
左:筍・地鶏炒め(アスパラ・椎茸)
右:八汐鱒造り
左:手作り豆腐
右:虹鱒塩焼き
左:筍と山菜の天麩羅
右:猪鍋
左:稲庭うどん
右:とちおとめ
里山の夜は静かにふけて行きます。
聞こえるのは風にそよぐ木の葉の音と、カエルの鳴き声のみ。
そして夜明けが。
朝食も里山の恵みづくしです。
朝食:(左から時計回り:かき菜炒め・塩鱒・蕗味噌・しらす卸し・ほうれん草おひたし・かぼちゃ煮・温泉卵・味噌汁・御飯・牛蒡きんぴら・大根浅漬け)
お洒落な調度品
裏庭には一面の蕗と桜の木が
食後は鶯の声を聞きながら広縁の椅子でしばしうたた寝。
名残惜しい気持ちを抑えて帰途につきました。
緑と花いっぱいの環境、地物のみの洗練された料理、懐かしい古民家の佇まいに心癒される素晴らしい宿でした。
里山の宿「梅庵」
一泊二食 一万五千円(税別) 二名から四名(四〇歳以上限定)
〒327-0322
栃木県 佐野市 梅園町 366-1
Tel/Fax?? 0283-65-1675
こちらは以前から気にかかっていた宿でしたが、天然温泉でないということがネックになって訪問に二の足を踏んでいました。
しかし実際訪れてみると、そんなウィークポイントを補って余りあるロケーション・施設・料理・雰囲気と接待で期待以上に満足させていただける素晴らしい宿でした。
しかし不安材料がひとつあって、奥様のおみ足の調子がかんばしくなく、宿を閉めようかと何度も考えたそうですが、常連のお客さんたちから頼まれて何とか続けている状態とのこと。できる限り頑張っていただきたいところですが、皆さんもこの稀有な宿にぜひ応援をお願いします。
関連記事:
関連記事はありません。
4 Comments
こんばんは。
先日、‘‘のし梅’をキーワードに
検索していましたら
〈梅庵〉を発見しまして、
とても素敵な所が近くに在ることに
驚きました。
私は調理師なのですが
3月31日をもって、職をうしなうのですが
自家栽培の食事処に憧れが有りまして
働かせては頂けないかと思い
コメントさせて頂きました。
自給自足生活、草刈り何でも
やっている子育ては終わった48才主婦
です。
FUJIKURAさん サイトを見つけてくださって、コメントくださってありがとうございます!
このサイトは泊まった人がお気に入りの宿の宿泊レポートを書くものでして、「梅庵」のお宿の方はたぶんここをご覧になっていないと思います。
「梅庵」の公式サイトはこちらになりますので、ここからお宿に問合せしてみてくださいね。
http://kominka-ryokan.com/main.html
もし梅庵で働く運びとなりましたら、またコメントくださいね。
応援してます!
コメントありがとうございます。
グループ経営のパターン化した旅館や部屋付き露天を取って付けただけのようなお篭り宿ばかりが林立する昨今、こうした小数組限定の古民家宿が少しずつ増えているのは年配者にとって嬉しい傾向と思います。
ただその「古守宿一作」や、大鹿村「右馬允」、檜原村「山城」など興味深い古民家宿は数ありますが、いずれも天然温泉ではないのが残念です。
コアな温泉ファンは敬遠するかもしれませんが、一度頭を切り替えて宿泊してみれば全く異なった世界が開けること請け合いです。
こちらの読者の皆さんも、選択肢の幅を広げてぜひお試しいただきたいと思います。
shunさん、梅庵のレポートありがとうございます!
一日一組、茅葺の古民家、土地に根ざした料理、40歳以上なんてどれをとっても激シブで興味深いです。
小淵沢の古守宿一作が思い浮かびました。
また発掘お待ちしてます。