美濃付知峡 渡合(どあい)温泉 宿泊レポ

岐阜の景勝地・付知峡奥のランプの宿、渡合温泉の宿泊レポです。

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出番を待つランプたち
日本に「ランプの宿」を売り物にする宿はいくつもありますが、そのほとんどはランプ型の電球であったり(高峰温泉、駒の湯温泉など)、実際は電気が通じているのに雰囲気だけでランプを使ったり(葭ヶ浦温泉、青荷温泉など)していいます。

もちろんそれはそれで風情はありますが、今回ここにご紹介する渡合温泉は、苗場・赤湯や宮城の湯浜温泉・三浦旅館などと共に今では希少になってしまった電気が通じていない本物のランプの宿です。

*駒の湯に関しては、かつては実際のランプを使用していましたが、一度火事になり安全のため自家発電の電気でランプ型電灯を使用。お願いすれば本物のランプを使わせてくれます。近年は再び実際のランプを使用することもあるようです。

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食事処ひろづきと付知峡入口
渡合温泉の入口付知峡(つけちきょう)は中央道中津川ICから一時間ほど、美しい森林の中の渓谷に数々の滝を望む景勝地。
まずは渓谷入り口にある「ひろづき」さんで食事です。
こちらは温泉民宿も経営し食堂も営んでおられますが、こちらでいつも頂くのは幻の「あじめドジョウ」。 なんと清流の砂地に住むという稀有なドジョウで、こちらでは唐揚を塩で頂きますが、普通のドジョウのように泥臭さがなく、川魚独特のほのかな香りが身上です。

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幻のあじめどじょう
しばし紅葉の付知峡を散策します。

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紅葉の付知峡と干し柿
紅葉の付知峡
付知峡
付知峡
付知峡

いよいよ宿へ向かって出発です。
宿はこちらから以前森林鉄道が走っていたという林道を、付知川沿いに約8キロさかのぼった旧貯木場付近に湯煙を上げています。林道には付知峡最大の「高樽の滝」を初めとして深山幽谷の息を呑むような美しい光景が次から次へと現れます。

林道にて
林道にて

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高樽の滝
ダートが続き、道も細くなって心細くなるころ、山小屋のような宿に到着。ランプの清掃に余念のないご主人と奥さんが出迎えてくれました。

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大正時代からの建物
温泉は江戸末期に山師によって発見され、旅館営業は明治期から。 建物の基本は大正期からそのまま、ということです。 玄関は山小屋の風情、まきストーブやすすけた壁が時代を感じさせます。 天井には出番を待つランプ達が。

 

出番を待つランプたち

縁側から栃(とち)や栗の木が見える部屋には裸電球が一つだけ。 昼間はディーゼル発電機で発電しますが夜10時以降はランプに切り替えられます。 遠い昔の記憶にある田舎屋のような部屋の廊下越しには雲の切れ目に奥美濃の山々が望まれ、「山奥に来たんだなあ」と何とも言えない感慨を感じさせてくれます。

角部屋 風が心地よい

一階客室への階段
洗面所

風呂は木曽五木のひとつ高野槙(こうやまき)で作られた小さ目の浴槽が二つ並び、手前が源泉で窓側が山水を沸かしたもの。いずれも五右衛門式で加熱しています。
浴室は同じものが二つありますが、多客時を除いてひとつの浴室を貸し切り制で使用。

泉質はナトリウム – 塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉10.6度、pH8.1。
入浴時間は15:00-20:30、7:00-10:00。

浴室

ランプが灯る
山水で冷やしたドリンク

そして食事が何とも素晴しい。 冷蔵庫がないため、素材はいつも近所の山、宿の養殖池からの採れたて。 素朴な郷土料理の調理で供されます。

鯉の洗い(特産のたまり醤油で)とアマゴの塩焼き、鱒の南蛮漬け、山菜盛り合わせ、山菜てんぷら(ほとんどが木の葉)、鯉の甘露煮、木の芽味噌の豆腐田楽・・・ 目だけで満腹になりそうな山の献立が所狭しと並べられます。

夕食膳
中津川の地酒飲み比べ
胡麻豆腐・天然舞茸炒め煮
虹鱒南蛮漬け・蕗味噌
野蕗佃煮・筍胡麻和え・コシアブラ味噌和え・ イタドリ煮物・栗渋川煮
アマゴ刺身
岩魚塩焼き
鯉旨煮
特大五平餅(30センチ)
野菜と木の葉の天婦羅
ニンギョウタケの炊き込み御飯
ランプの説明
夜明け
朝食
心づくしの朝食膳」
入り口に咲いていた秋海棠

以前こちらから山一つ隔てた長野県側の王滝村に、やはりランプの一軒宿・濁川(にごりかわ)温泉という宿がありました。当時は木曽唯一の高温泉で、炭酸鉄泉の濁り湯が足元湧出する川原に作られた湯小屋は、正に仙境という雰囲気でした。しかし1984年、不幸なことに土石流で若主人ご夫婦を含む一家四人が土砂の下敷きになり、宿は廃業となってしまいました。

以前そのお話をしたところ、渡合温泉の先代女将が「昔、濁川先代の半場千秋さんが山を越えて、鯉を一匹持ってきてくれた」と懐かしそうに話してくれた記憶があります。

私の大好きな宿でしたが、そのあと近隣で同じような宿を探して見つけたのがこちらで、以降数年ごとに八回訪問しています。その間に代替わりもし、ガイドブックなどで多少の知名度は上がりましたが、宿の素朴な佇まいは昔とまったく変わっていません。

ご紹介した付知峡はもちろん、周辺には遊歩道も整備され、高時山登山などトレッキングの基地としても利用できます。
携帯はもちろん通じませんが、たまには世俗を離れて川音と鳥の声だけの自然の中でリラックスする休日を過ごされては如何でしょうか?

渡合温泉旅館

〒508-0421 岐阜県中津川市加子母渡合

公式HP

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2 Comments

  1. Shun

    湯ノ倉温泉・湯栄館、歩いてしか行けないランプの宿で、川と一体化した露天風呂と地ものだけの料理が素晴らしい宿でした。しかも女将さんが何と私と同じ横須賀のご出身ということで親近感もありました。
    しかし台風による河川の増水で水没、ご主人と女将がヘリコプターで救出される様子と宿が屋根まで水に浸かる姿がTVで放映され、悲しい思いをしました。本当に残念です。
    渡合も数年前に林道が崩れて一般車が通行できない時期もありました。幸い今は普通に営業されていますが、おっしゃる通り秘湯宿はやはり行けるうちに行かないと、ですね。

  2. タビエル

    Shunさんのレポ、「こんな宿があるのか~」という驚きに溢れてます。すばらしい。
    湯浜温泉・三浦旅館の名が出たので、その近くのいつか行ってみたいと思ってた湯ノ倉温泉・湯栄館を検索してみたら、災害で廃業しているとの事・・・。いける時に行っておかないとですね。

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