お部屋 なでしこ
宿を紐解く快感
ここは大室山のふもとの別荘地。
温泉街ではなく、高台にぽっかり浮かんだロケーションに「うち山」はあった。野鳥が囀っている。駐車場に到着すると、宿の方が車まで迎え出でてきて、男性スタッフが手際よく荷物を運んでくれる。
視界をさえぎるガッシッリとした木製のドア。入るとそこはほの暗い小さな空間。次の戸が開くと視界が開け、高台から遠くに伊豆の海を見下ろす景色。ここが帳場なのだ。
それは徐々に宿を紐解いていくような快感。
町屋をイメージしたという棟々は独立して建ち、渡り廊下がそれらをつなぐ。そのせいか部屋に居ると人の気配が全然ない。
「女性用の浴衣は三枚!」
と連れが喜んでいる。男にとっては「そんなことで?」って思うのだが、これがうれしいらしい。ちなみにメゾネットの2階のベッドルームにはパジャマまで用意されている。
これぞ絶景の露天風呂
メゾネット2階の風呂はまさしく絶景の露天風呂だった。
海と空に開かれた高台から天城連山が遠く立体的に連なっている。晴れていれば見えるはずの海に浮かぶ伊豆七島の景色は今回はお預けだが、この圧倒的な開放感に心躍らないわけがない。
振り返るとこんもりとした大室山の山頂が見えていました。
夕食は基本は個室の食事処なのだが、部屋食を希望することも可能らしい。
なんと半分の割合で部屋食を希望するそうだ。ここまでくると本当に誰にも会わずに宿で過ごせるかもしれない。
そこまでして身を隠す必要もないので掘りごたつ式の個室風食事処へと向かった。
なんでしょうこの研ぎ澄まされたような感じは。お品書きがお盆の中央に、日時計のように丸めて立てられていています。
食前酒は、静岡の地酒 大吟醸『磯自慢』。洞爺湖サミットに出されたものと、同じ酒蔵のものだそうだ。この宿を取り仕切る成田さんは酒によほど通じているようで、おそらく”渾身のひとすすり”を提供してくれたに違いありません。味の分かる人ならため息がでたようなシロモノのはず。下戸でスイマセン!他にも「お宿うち山限定酒」、「日本酒せれくしょん」「ワインセレクション」などなどお酒好きにはたまらないと思しきラインナップがもりだくさん。
われわれはとりあえずビールで(笑)
せっかくいいお酒を取り揃えているのに、なんて呑ませ甲斐の無い客でしょう。しかしビールはちゃんと生ビールを用意しているのがえらいですね!生を出す宿が増えてきたとはいうものの、まだまだ少数派ではありますから。
このグラスは電球を作っているガラス屋さんが作ったものだそうだ。
うす?いグラスで口当たりがすごくなめらか。泡もきめ細かく、しあわせ?
先付は丸茄子の枝豆餡かけ。
巻きエビ、ウニなどの、枝豆のソース。食材たちが生むの鮮やかさが食欲に火を灯す。出汁の滲みこんだ煮びたしの茄子と、奥行きある枝豆のソースが静かな感動をさらった。
料理を運んできてくれるスタッフも素敵なんですよ。笑顔、物腰、さりげない目配りと気配り。
牛タンの西京付け。うんうん頷きながら、もう言葉になっていない(写真ぶれてしまった)。
井戸のつるべをイメージした器には別名ノドグロの高級魚赤むつ、ほうぼう、アジのお造り。赤ムツは淡い味だけど深みがありじっくりと時間をかけて甘さが広がってくる。脂ののったアジも旨い。醤油だけでなく、好みに応じてポン酢・大根おろしでも頂く。
そしてワサビがこれまたうまい。さすが産地の静岡だと感心したが、どうもそれだけでは無いらしい。
聞いてみると、料理を供する係がお客の料理の進み具合を計りながら、造りを出す直前にワサビがすり終わるように料理長にGOサイン出すのだと言う。
ワサビをするタイミングにまで気を遣うなんて。こういう見えないところに心血を注ぐ精神がうち山を支えているのだ。
若鮎塩焼き。香ばしい苦味の間をぬけてくる若鮎の味のはかなさがいい。
トマト酢と蓼酢でいただく。
連れは糸縒鯛御飯を一口ほおばってからだをくねらせた。
お米一粒一粒に出汁がしっかりしみこんでいて、あっさりしているのに、しっかりとした旨味。たまらずおかわりをお願いすると、また違った素敵なお茶碗で登場。飽きがこないようにと京都産の白胡麻も用意してくれる心配りに感動。
デザートは河津マンゴー『香り姫』
5年前から河津の方が栽培していて、1年前にやっと商品化にこぎつけたと言うしろもの。
マンゴー100%のマンゴーアイスにマンゴー100%のソース。カットしたての生マンゴーにマンゴーの甘さを引き立たせるレモンシャーベット。
香り姫というだけあってとても香りが高く、味も”これでもか”というくらい濃厚でした。
もう?最高っす!!
(後編へつづく)
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