里山十帖 宿泊レポ 後編

翌朝 露天風呂
朝ごはんの前に朝風呂です。前日とはお風呂が男女入れ替わっています。

 

木の風格ある内湯。高い天井に湯気が抜けていくのを見ていた。

 

ふわふわ浮いた綿のような湯の花を救い上げてみる。
コラーゲンのようなそれを指ですりつぶしてみると、濃い美容液のよう。あ?、この湯のトロリとした湯の肌触りの正体はこれか。

 

朝食も早苗饗にて

 

わっぱの玄米ご飯

 

野菜たっぷりの味噌汁

 

自遊人自家製の2年味噌をいれて

 

隣町の関根さんがつくる「雪下人参」のストレートジュースで目覚めの一杯。100%ならではのどろっとしたジュースは、さらさらと繊維がたっぷり舌に残るのが楽しい。そして、砂糖不使用なのに甘い!

 

いわしの生姜煮
口元に持ってきたときに、ふんわりやさしい香り。玄米ご飯と食べると上質な滋味が口の中を占領する。

 

また帰ってきます。

 

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里山、十の折り本

風呂上りに、タオルを手に取り、
「んぉ。」
と声を発してみたくなる。
すっぴんの木肌の階段を素足で歩くとき、ベッドに滑り込んだとき、廊下に出たときに香っているアロマに知らずに気分がよくなってたとき、無骨な張の行き交う古民家にビビッドな赤い椅子という大胆なデザインにインスパイアされたとき・・・覚醒してくる視覚、触覚、嗅覚。

 

古民家と赤い椅子

豪雪地帯。国道を外れると道路の両脇には雪の壁。
「センスを問われる宿だったらどうしよう。」
ぼくらの心にも、そんな壁が立ちはだかっていた。
150年もの間、豪雪に耐えてきた古民家の重厚な扉が開く。
古民家でありながら洗練された温かみのあるモダンな空間。
ここにビビッドなピンクのチェアーを置くことをだれが思いつけただろうか、大人の空間。
地図のイラストを見ながら館内の説明をしてくれてる。どことなく古民家で絵本を読み聞かせてもらってる気分になってきた。

 

間違いなく、日本屈指の絶景露天風呂

女湯から「きもちいー!」という絶叫が聞こえた。
いっしょの景色を見ているのだろう、他にお客さんもいないらしい。
大きな声を出しても、向こうの山までは届かない。
谷を隔てた向こうの連山は手斧(ちょうな)でなぐった造形物のように、ごつごつと力強い。
それに粉砂糖がたっぷりかかっている。
ここは日本屈指の絶景風呂

絶景ばかりに意識がいっていたが、湯もいいのだ。
足を湯に沈める瞬間、皮膚の表面とろーんと溶けていく感じ。
一皮剥けたってこのことだろう。
ふわふわ湯の中を舞う白や褐色の湯の花を救い上げてみた。
コラーゲンのようなそれを指ですりつぶしてみると、濃い美容液のよう。
あ?、この湯のトロリとした湯の肌触りの正体はこれか。

泉質にあるナトリウム炭酸水素塩泉というのは別の言い方では重曹泉なのだそうだ。
なぁるほど。

 

早苗饗(さなぶり)

「料理は精進料理みたいなもんかね?」
科学調味料の味に慣れきってる自分たちには、オーガニックの料理というのはきっと味気ない、”ムズカシイ”料理に違いないと思っていたのだ。
そんなぼくらにはちょっとしたショックであった。
まず有機にんじんのムースは砂糖を使ってないといいながら、デザートにしていいくらい甘い。
ロースビーフは超絶的に旨かった。うなった。極上のすき焼きを口いっぱいに頬張ったかのような喜びが湧き上がる。
特に印象深かったのが黒にんじん、黄色にんじん、オレンジにんじんのバーニャカウダ。とにかく素材命の食べ方。雪室にて保存することで糖度がアップするといっていただろうか。白味噌ベースのディップというのもこれまた絶妙であった。
里山の料理でこんなに魅了されるなんて!
素材の味、濃く、丸く、力強い。
そしてお腹いっぱい食べても胃に優しかった。

食材ひとつひとつに生産者の顔があり、それができあがるまでの生産者の思いや苦労や背後に脈々とある。
その野菜たちには主役も脇役もなく、僕らの食卓を明るくした。

 

 

「なにか一つでも、お客様にとっての発見があればと思うんです。」と岩佐さん。
自分にとってのそれは、香りと静寂。
風呂上りにラウンジで梅酒とナッツで連れを待つ。
昼間より照明は落とされて体を眠りの準備へといざなう。そこに漂うアロマ。
連れも合流して酒盛り(梅酒だが)。
カシューナッツにアーモンドにそしてめちゃうまいイチジクのドライフルーツをほおり込む。
車の音一つない静寂。
部屋へ戻るまでのひととき、起きていることをもう少しだけ楽しみたくなる。

帰り道、車の中で、里山の絵本を再び紐解く。
「あのバーニャカウダのにんじんが・・・」「湯の花つまんでみた?」と、話は尽きない。

 

 

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里山十帖 宿泊レポ 中編 夕食から就寝まで
里山十帖 宿泊レポ 後編 朝食までと、思い出話   ←いまここ
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