笛吹川温泉「別邸 坐忘」

武田信玄ゆかりの名刹、恵林寺の近くにある一軒宿、笛吹川温泉「別邸 坐忘」の宿泊レポです。
こちらは平成7年(1995)開業の料亭旅館で、3000坪の敷地に21室という贅沢な造り。関東エリアでは珍しい、茶の湯由来の本格京懐石を頂くことができます。

開業してすぐ投宿、以来数年ごとに利用するお気に入りの宿です。25年間で七度経営母体が変わりましたが、好評の保坂実氏の料理はそのまま継承されており心配ありません。

笛吹川沿いの宿

フロント

今回は初めて増設された離れを利用。
全八室には和モダン客室・ベッドルーム・それぞれ専用露天風呂が設置されています。

離れへ
離れ「璃寛(りかく)」
離れ「璃寛(りかく)」室内

ベッドルーム
部屋付き露天風呂

風呂は大浴場に洞窟風呂が付いた露天風呂があります。
泉質は自家源泉でアルカリ性単純温泉43.4度・ph9.5・湧出量377L/分・掛け流し。
実用泉温は40度前後とぬる目ですが、源泉が注がれる洞窟風呂内は結構高温で、好みの温度を選べます。

大浴場
洞窟風呂

ライトアップされた庭園

そして素晴らしいのは夕食です。以前は部屋食でしたが現在は新設された食事処でいただきます。
関東近県では珍しい、一汁三菜から始まる本格京懐石。
こちらではあまり馴染みがない方も多いとは思いますが、これが古式にのっとった茶懐石料理。もちろん食材・味・しつらえも一級品です。
せっかく山梨に来たのでこちらの宿と提携のマルキワイン「浜田 Faucon 樽熟シャルドネ」と地酒「二十一代 與五右衛門 純米吟醸」をいただき、最後まで大満足の夕餉でした。

お品書き「山眠る」
一汁三菜  飯:一文字・武川四八米  汁:白みそ・蕎麦がき  向付:真鯛杉盛り 青のり・すだち・炒り酒  *箸は作法通りの濡れ箸
煮物椀:冬鴨治部煮  海老芋・冬子(どんこ)・すだれ麩・人参・法蓮草
まるきワイン:浜田 Faucon 樽熟シャルドネ
焼物:乾徳山 天子炭火焼き・丸十・椎茸・蕗味噌

天子(あまご)は「山女魚(やまめ)の一種」との説明でしたが、「近似種」が正確なところでしょう。天子はサツキマス、山女魚はサクラマスの陸封型で、身体の模様、分布域が異なります。

肉料理は今様ですが、違和感は感じさせません。

陶板 :甲州味めぐり  甲州牛・ワイン豚・信玄鶏・クレソン・柚子胡椒
強肴:柚子釜蒸し  雲子・湿地茸・身延湯葉煮 芽葱・ちり酢餡・敷き昆布
箸洗い:(冬至にあたり)南京
八寸「一陽来復」 唐千樹・大判百合根・姫大根もろみ・あみかさ柚子・ちょろぎ・松葉串

一般的な旅館料理(会席・懐石とも)では前菜盛りとしての「八寸」が一般的ですが、それは「前八寸」と呼ばれる酒菜。

茶懐石では強肴(しいざかな:追加の酒菜。または進肴)の一つとして食事の前に供されます。

食事 湯汁:焦がし湯 御飯:寒鰤と大根の炊き込み 香の物
抹茶・お干菓子(和三盆落雁)
水菓子:柿・苺 甘味:信玄アイス・黒蜜
ラウンジ
ラウンジ
ワインの試飲

食後は無料オプションで甲府盆地夜景ツアー。
笛吹川フルーツ公園まで送迎があり、「日本新三大夜景」を楽しみました。

朝食も「朝の茶事」に見立てたもので、まずは身体を温める「お座付け」、縁高に入った惣菜と食事を一の膳、に山梨の郷土料理「おざら」を二の膳として配したもの。
目でも舌でも楽しめる、正に「眼福、口福」のひと時でした。

食事処「まる喜」
お座付け 手作り豆腐の葛煮
一の膳 折敷(大徳寺縁高)飯:武川四八米 汁:甲州麹味噌 なめこ汁・三つ葉 香の物
縁高:まぐろ叩きとう玉・鶏丸べっこうあん・紅白なます・特選塩鮭・半熟玉子・たらこ昆布巻き・法蓮草胡麻汚し・かまぼこわさび漬け・焼海老旨煮・佃煮昆布
冷製預鉢:冬野菜と手作りポテトサラダ・甘柿ドレッシング
二の膳:信玄箱瓢箪 甲州名物おざら(ほうとう)根野菜・甘味噌つゆ・薬味・湯桶
水菓子:林檎のタルト(オレンジ・柚子ゼリー)苺・キウイ

施設・食事・接待とも高水準ですが、2022年経営母体が新しくなり、また世情もあってか近年宿泊料の大幅値上げと食事内容の省略化が若干行われました。

それでも依然として魅力的な施設ではありますが、開業以来の顧客としてはできうる限り今の形の内容を維持していただきたいところです。

笛吹川温泉「別邸 坐忘」公式HP

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