奥湯河原温泉「海石榴(つばき)迎賓館」(1984年開業)は同地の料亭旅館「山翠楼」(1933年開業)と同「源氏別館」「桃山第」、別館「海石榴」(1978年開業)の中でも最高峰のランクになる贅を尽くした宿泊棟です。
一棟のうちツーフロアに僅か五室、90から200平米の数寄屋造り・全室露天風呂付スイートという贅沢な間取り。
「海石榴」は首都圏におけるいわゆる「高級旅館」の奔りで、私が最初に宿泊したのは1987年でしたが、当時から宿泊料の変化がほとんどないのは、物価を考えるとバブル前夜とはいえ如何にこちらが飛びぬけた存在であったかがわかります。
しかし時代の変遷とともにさしもの高級旅館も経営が逼迫、2011年には両館とも、北海道を中心にホテル・旅館経営を展開する野口リゾートマネジメントに経営移転となりました。
「迎賓館」への通路
今回の部屋は「春曙紅」と称する110平米四室のお部屋、間取りは踏み込み3畳・本間16畳に床の間4畳・ベッドルーム10畳・控室3畳・周り広縁・露天風呂。
一面のガラスに囲まれた広縁には夏障子がはめられ、左右から奥湯河の新緑が望まれます。
部屋付き露天風呂からも木々が望まれます
ベッドルームにはシモンズダブル2台
大浴場は内風呂と、カジカガエルの声を聞きながら奥湯河原の山々を望む露天風呂があります。
泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉46.1度・pH8.4・湧出量50L/毎分。
湯使いは循環・循環放流併用で内風呂のみオーヴァーフローあり、いずれも終日入浴可能。
湯上りの生ビールと柚子ゼリーのサーヴィス
冷蔵庫のドリンクももちろんフリー
木々がライトアップされ、夕餉への期待が高まります
やはりこちらで最大の楽しみは、一品一品部屋に運ばれてくる夕食です。
経営移転したとはいえ西脇一郎総料理長を始め多くのスタッフはそのまま引き継がれており、「泊まれる料亭」の称号に恥じない内容を楽しむことができます。
食前酒からデザートまでたっぷり二時間かけて堪能させていただきました
館内と朝
朝食も下手な宿の夕食を凌ぐ内容で御飯が進みます。
14時チェックイン・12時チェックアウトとの22時間ステイということで、食後もゆっくりと入浴・転寝が楽しめるのはこうした宿ならでは。
こちらは経営移転してからの業績は安定しているようですが、同系統の宿がしのぎを削って多くの老舗がリゾート会社に運営委託・譲渡する時代になりました。
委託後の営業様式は新規運営会社によって様々ですが、こちらの運営会社は旧施設の業態をそこなうことなく持続しており好感が持てます。
顧客の年齢層と嗜好の変化に如何に対応するかがこれからの宿の課題と思いますが、古くからの温泉宿愛好者はとしてはこうした正統派の宿が、多少形を変えながらも生き残ってほしいと思います。
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