岐阜 飛騨古川 八ツ三館
お部屋 招月楼 一般客室
1.到着しておもう。この宿は飛騨古川の古い町並みからの続き絵のようだ。
2.”味”を求めるならばこの招月楼ですね。ここは布袋の客室。水周りはちゃんと手が入れられていて感心。窓に映し出されるのは総檜造りで木造建築では飛騨最大を誇る本光寺。
3.以前あった木製の樽風呂(お酒の仕込みに使われてたもの)、気に入っていたのですが、釜に変わっていました。木はやはり傷むのでしょう。でもちゃんと酒粕で白くにごったどぶろく風呂。屋根が釜のふたになっていてお茶目です。樽酒をちびり。
4.女湯の釜風呂ははバラ湯になっていたようです。
5.食事処に入るとろうそくの炎が上に向かってすーっと曲線美を見せている。照明の消された個室にはそのあかりのみ。窓の外は暖色にライトアップされた庭園。素敵だ。
6.お吸い物の蓋を開けると、ふーっ。湯気とともにいい香りが立ち上る。山菜がたっぷり入っている。
7.鮎の皮に炙りをいれた造り。その消え行くような繊細な甘さ・淡さが印象的でした。
8.まるで生け花のように岩魚の串焼きが運ばれてきた。「時間をかけて火を通していますから、骨まで食べれると思いますよ」と教えてくれる。
9.大きくはないが、泣く子もだまる飛騨牛が3切れだ(右下)。ごまペーストの筍と飛騨牛を一緒にほおばってみた。筍の切れのある味が肉の旨みにくっきりとコントラストをつけ、しかし飛騨牛の味はかすむどころか、ぐいぐい旨い。
10.これが朝食か?と思うくらいに豊かだ。湯気の立ち上る温野菜。ごまドレッシングも絶妙。希少なお米、「龍の瞳」一杯目はおかずで、二杯目は朴葉味噌焼きで。ご飯があまったらおにぎりにしてくれた。
まだ知らない日本がある。でもそれは潜在的に誰の心の中にも巣食う日本。
木造の戸が開くと、漆黒の瓦を敷き詰めたような広い玄関がある。陰翳礼賛。今の時代からするとほの暗い館内は、木造らしい建物の息遣いが感じられる。正面には五月人形が飾られてる。だいぶ古いものだそうだ。
部屋へ案内される前に、貴族がティータイムを楽しむような賢覧豪華な洋館の一室に通され、ここで抹茶と菓子を頂いた。心わきたつ。文化財的な建物を見学すると言うのはよくあるが、八ツ三館の特に招月楼や光月楼なんかは、泊まれる文化財とでも言おうかな。建物だけじゃなく、その料亭文化を味わえるのがいい。
到着しておもう。この宿は飛騨古川の古い町並みからの続き絵のようだ。過去からの続き絵でもあるし、未来へともつながっている。自分が思い浮かべる文化とはそういうもの。古いものと新しいも。古さを頑なになっては時代が変わると役目を終える。新しいものは不安定。その両方を内包してながら幾多の時代を潜り抜けてきたものは、わけも無く人を惹きつけて止まない。
今回の部屋は招月楼。「あぁ野麦峠」を知っている方なら、八ツ三館が検番宿として登場した、あの時代の空気を肌で感じることのできるはずだ。急な階段はここを無数の人々が上り下りしたらしく、もともとまっすぐだったと思われる踏み板にはきれいな曲線が生まれて、裸電球の灯かりで鈍く光っている。はしゃぎたくなるところだが部屋に入ると茶香が焚かれていてなんとも穏やかな雰囲気に。昔ながらの窓を開けるとお寺が一幅の絵のように景色を陣取っている。この部屋にすっと気分を溶け込ませられるあたり、自分って日本人なんだなぁと実感する。
食事前、ウェイティングバーでレモンの食前酒で前に軽くのどを潤す。これから頂く宴に向かって気持ちのステップが一段あがる。食事処に入るとろうそくの炎が上に向かってすーっと曲線美を見せている。照明の消された個室にはそのあかりのみ。窓の外は暖色にライトアップされた庭園。素敵だ。
豆腐かと思い口に運んでみたものは、なんと不思議な風味。メニューを見るとアスパラ豆腐ということだ。山椒が隠し味で上にかかる出汁のジュレがこれまたいい。玉子焼きかと思って口に運んだものは、おやっ?モッツアレラチーズの木の芽和えなのか、といった具合にいちいち芸が細かい。となりの部屋から楽しげな声が聞こえてくる。娘さんが両親を連れての旅行のようだ。
巣篭もりカップルのための隠れ宿とはちょっと違い、宿のベースに料亭というおとなの社交場としての空気がある。料亭旅館という命名が腑に落ちる。
食事の後はシアタールームへ寄り道してから、リラクゼーションルームに入り浸ってました。ワルツのクラシックの音楽に身を委ねながら満ち足りた時間を過ごす。気持ちのなかの余計なものがそぎ落とされて整理され、すっきりとした気分だ。翌朝、前日から降っていた雨が上がりだし、ほんのり朝の陽光が庭を照らし始める。
いい朝だ。祝福を受けているようで気分は上々。
ここに書ききれなかった話はブログで
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