峩々温泉

宿泊日 2007年8月
お部屋 こまくさ(浴室付き)

 

 

神秘的なエメラルドグリーンを見せる蔵王の”お釜”から車で数十分。車の通りはほとんどない。時々思い出したように野鳥が静寂を裂く。これぞ秘湯といったロケーションに姿を現すのは、なりふり構わずの山小屋ではない。意想外に瀟洒な棟々がいくつか並んでいる。

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湯平(九州)、四万(関東)と並ぶ、「日本三大胃腸病の名湯」の一つ。胃腸の湯は大抵のんで効く。だから帳場の脇には、飲泉が蛇口から出っぱなしになってます。味は複雑で形容しがたく、鉄分が多いようで旨いと言うものではないのだが、するすると喉を通っていく不思議な感じがする。

 

スタンダードの和室タイプもいいが、本日はリニューアルされたばかりの洒落た小上がりベッドスタイル。チェックインからすぐにゴロゴロできるのがうれしい。間違いなく人気の部屋になるでしょう。

 

貴重なお湯が、唯一この部屋に引き込まれています。ちゃぶ台の小部屋にいる連れと話をしながら入浴できるという面白い造りになっています。

 

大浴場には「あつ湯」と「ぬる湯」が隣り合ってます。「入浴」「飲泉」「かけ湯」がワンセットの温泉利用、これが峩々の療養湯治の宿であり続けることが基本姿勢の表れなのでしょう。リニューアルされたばかりのお風呂は、清掃が行き届いていて、気持ちよく木の縁に寝そべる。

 

竹筒を手にして寝そべる。熱い湯をすくっては、胃のあたりめがけてかける。100回は繰り返すのが慣わしらしい。湯は腹から胸を伝い、コロコロと首のほうまで転がってきて気持ちいい。(写真はリニューアル前のお風呂のときのものです。)

 

“峩々”(きわだって嶮しいの意)の名前どおり、野趣満点の露天風呂。混浴風呂。明確な決まりではないけど岩で狭くなっているあたりを境に、手前側がなんとなく男の陣地。一応岩で身を隠せるので、混浴初心者も夜などをねらってチャレンジしてほしい。

 

何とか言う木の実の食前酒で食事がスタート。きれいに盛り付けた旅館料理とも、川魚中心の山の宿料理とも違う。こけおどしを廃した。心と体に優しい料理。ベルツのソーセージが旨かった。

 

 

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食後はサロンでデザートが振舞われるが白ゴマのブランマンジェというムースと水出しコーヒー。ピアノ曲が静にながれて、自分の家のような寛ぎ。まぁ実際の自分の家は日用品がごちゃごちゃしていて寛ぐどころではないのですが。

 

朝風呂は週刊現代の扉ページにも掲載されたお風呂。紅葉のときが格別のようです。

 

 

 

竹筒を手にして寝そべる。

熱い湯をすくっては、胃のあたりめがけてかける。100回は繰り返すのが慣わしらしい。
湯は腹から胸を伝い、コロコロと首のほうまで転がってきて気持ちいい。湯をすくう左手は同じリズムで浴槽と腹の上を行ったり来たりしているがやがて意識はもうろうとして、左手だけが反復運動を繰り返す。映画「リバー・ランズ・スルーイット」で”ブラピ”が演じるポールの、神の領域のロッド捌きが頭をよぎる。
熱い湯は湧き出したままの鮮度のいい湯を掛け流す。源泉温度は58度で、これを直送するのだからだいぶ熱い。3分くらいは入る人もいるそうだが、自分は30秒くらいが限界。なので木の縁に寝そべりかけ湯する峩々温泉ならではかけ湯が昔から続いている。一般的には体の患部に掛け湯するらしいが、これと言って病んでる箇所も思い当たらないので、料理を美味しく食べられるようにという不純な動機で胃の辺りに投下。
どれくらい時間が経ったのだろう、愉悦のとき。
神秘的なエメラルドグリーンを見せる蔵王の”お釜”から車で約30分。あたりには霧が立ち込め、車の通りはほとんどない。時々思い出したように野鳥が静寂を裂く。(これぞ秘湯)“峩々”とはきわだって嶮しいという意味だそうだ。そんな山奥の秘湯と言えば、帳場に無口な主が馴染み客ばかりを相手にするのが常だが・・・。ところが帳場の若いスタッフは私たちを見つけると「いらっしゃいませ、お疲れ様でした!」と清々しい迎え。
そこにあるのはただの山の宿とはちょと違う。湯を真ん中に、体を治す湯治だけにとどまらず心のための湯治場でもある。
木の香りぷんぷんする館から、最近リニューアルされたばかりの温泉付の部屋へ。小上がりにはいつでもゴロリできるように布団が待ち構えている。この寝具なかなか上質のもので素晴らしい寝心地。流し台、湯のみ、グラス、コーヒーカップなどが用意されていて数日の滞在にも向く。蛇口をひねると、キリッと冷えた蔵王の天然水が出てくる。ペットボトルにつめて持って帰りたい。極めつけに、ケータイの電波が届かないところがまたいい。

「おばんでございます」とスタッフに迎い入れられたのは、新しくできたダイニング。木の温もりがあり、間接照明がおしゃれ。食事がまたうれしい。何とか言う木の実の食前酒で食事がスタート。きれいに盛り付けた旅館料理とも、川魚中心の山の宿料理とも違う。こけおどしを廃した。心と体に優しい料理。岩塩で頂く自家製の豆腐。山菜・きのこを合えたみそを腹に詰めた笹蒸し。そしてベルツのソーセージが旨かった。驚かせることはほどほどに、ほっとさせる料理。お米はササニシキかコシヒカリ。板長の実家が米を作っていて、その日使う分だけをその朝精米して持ってきてくれるのだ。そんな生産者指定の食材ばかり。

数種類のワインからビールの備え付けサーバまで。秘湯とは思えない気合の入りよう。

この日は自分でも驚くくらい早寝した。翌朝一人混浴の露天風呂へ向かう。木の葉が覆いかぶさり木漏れ日を湯に浮かべる。湯については鈍感力の働きっぱなしの自分ですが、この湯がいいなぁと感じました。熱さのせいか、入ったばかりはキリッとしたさっぱり感があるが、慣れてくると肌をゆっくり撫でまとわりつくような、心地いい湯。上がるとしっとりすべすべの肌になるではないか。

至福の朝風呂であった。

峩々の空気はやさしい。

凝った演出があるわけでもなく、素顔のまま過せる。そして「湯が真ん中にある」といつ来ても感じる。 温泉を療養のために利用する「湯治」が日本から姿を消していく中で、 頑なに、湯治を守り続ける宿だからなのでしょうか。

チェックアウトを済ませ、宿を出るとやはり大自然の内懐であった。さて蔵王のお釜を見物してから「森のソーセージレストラン ベルツ」へ向かうとするか。

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